『立ち止まるな
 振り返るな
 前を向いて進め』

彼の口癖

不意に消え失せた温もり
繋いでいた手が急に離れた
視線を巡らせる
隣に居る彼の姿を探す
隣に居る筈の彼の姿を探す
いつの間にか立ち止まる
周りをゆく人達の流れは止まることなく
振り返る
人の波が立ち止まった僕を避けようと左右に別れてゆく
居ない
居ない

な んで?

しっかりと繋いでいた筈の手
彼の温もりは疾うに残らず
見上げる
此方になど見向きもしない大人達
違う
違う
彼は何処?
どうして。

渦巻くココロ
ぼやける視界
何で?
何で?
な いよ、何も
思わず俯く
閉じた目が熱い雫を流す
握り締めた手の平が痛い
痛い

立ち止まるな
振り返るな
前を向いて進め

進めというの?
空の色さえ見えないのに

立ち止まるな
振り返るな
前を向いて――

君はきっとそうするんだろう

深呼吸

ほら、繰り返して?

繰り返す

「立ち止まるな
 振り返るな
 前を向いて――進め」

一歩、踏み出す――

――其の言葉は、きっとこの日の為の――――

突発的に思い浮かんで書いた気がする
ちょっと古い 多分大学