彼はたまにたいやきを買って来る。

にこにこと上機嫌で、
「はい」
あつあつのそれをぼくに手渡す。
ぼくは半分呆れながらそれを受け取る。

ふたりで並んで座ってそれを齧る。
ぼくはしっぽから派だ。
彼は何故か背中から派だ。

甘い物好きな彼はぺろりとたいらげて、ふたつめを袋から出す。
ぼくがしっぽから派なのには理由がある。

「……」

ぼくは甘い物が好きだ。
でも甘すぎる物は苦手だ。
餡子はまァ好きだ。
でもあまり入らない。

しっぽは餡子が少ないのだ。
それを食べただけでももう気分はいっぱいなのだ。
ぼくが無言でしっぽが無くなったたいを見つめていると、
「ん」
彼は目敏くそれを見つけて、自分のたいを食べるのを中断して、
ぼくの手首を握って、ぼくのたいを一口がぶりと齧る。
そしてまた自分のたいをほおばり始める。

ぼくもまたたいを食べ始める。
皮の率が多い縁の部分ならぼくが食べるから、彼が餡子の多い身の部分を食べたのだ。

それを何度か繰り返して、ぼくはようやく一匹のたいをやっつけることが出来る。

「美味かったな」
「そだね……」
彼は満足げににこにこ笑いながら言う。
ぼくは俯いて素っ気無く言う。

彼はぼくが照れているのを知っているからただ微笑むだけ。

間接キスがしたいとき、彼はたいやきを買って来る。

たいやき(のち ところにより快晴)

突発的に思い浮かんで書いた気がする
大学時代で新しいほう