『約束の刻』
あれから幾重もの月日が流れたろう
君は憶えているのだろうか
不安と期待が綯い交ぜになった心を持て余しながら
僕は待っている
君は憶えているのだろうか
あの日交わした約束を
共に過ごしたあの一時の
本当にそんな日が来るなんてリアルに考えていなかっただろう
夢を見るように交わした些細な約束を
君は憶えているのだろうか
君は今、どうしている?
そう 例え会えなくたって構わないんだ
ただ君が今も、幸せでありますように
『風から伝わる噂』★
貴方が死んだって
風の噂で聞きました
貴方に会える日を、貴方が訪ねて来てくれる日を
心待ちにしていた僕は
そんなこと到底信じられなくて
だから貴方を探しに行きます
望んで入っていた安全な籠を飛び出して
ただ待っているだけの自分を捨てて
貴方に会いに行きます
必ず、会いに行きます
『流れる時の違い』
私にとっての些細な一瞬が
君にとっての一生で
永遠とも云えるこの生涯に
君ほど多くのものを見つけられるか解らないのに
例え摂理に背く偽りでも
君と共に過ごし君と共に衰え
君と共に消えようか
『花の薫りの中で』
此処は何処だった?
視界を埋め尽くす花は呉藍色
其れを口元に当てて妖艶に微笑む君
咽返る程の薫りは血色
私は誰だった?
くらくら歪む視界に重なるくすくす嘲笑う声
ざっと吹き抜けた風が花弁と君の髪を攫う
それが余計に血色の薫りを強くして
淀んだ渦が自分の周りを取り巻いているようだ
くしゃりと花の潰れる音
踏み締めたのは君か私か
縮んだ距離はどちらが縮めたのだろう
白い手が伸びて来る
たおやかな指は頬をなぞって其れから
嗚呼、君は誰だったろう?
果たして答えを知っていたのか
其れはもう今更 只管に如何でもいいこと
『月明りでできる影』
暗い道を歩く君と僕
月明かりで照らされた道を二人で
手を繋いで
伸びた影も寄り添っていて
――それが何だか気恥ずかしいけど幸せ
月明かりに照らされた君の横顔が
綺麗で艶かしくて素敵で
じっとみつめていたら君がふと微笑んだものだから
「何?」
「いや、じっと見てるから」
あああ、ばれてたよ
恥ずかしくて俯いたらくすくす笑う君の声
でも繋いだ手をぎゅってしてくれて
ああどうしよう、幸せだよ
暗い道は長くどこまでも続いて先は見えず
月明かりは仄かで頼りなく今にも消えそうなほど
終わりのない夜はどこまでも深くて
――でもきっと僕らは歩いて行けるだろう
『深海の住人』
闇の中で私は眠る
わずかな煌きも届かない深い深い場所で
恐ろしく美しいと伝え聴く輝きを夢見ながら
闇の中で独りたゆたう
ただ其れを現実に見たいとは願わない
閃き煌き瞬き輝き
最高に綺麗で何より残酷な

闇の中、私は独りただ夢を見る
『天から見える地上』
『こぼれおちる雫』
はたはた こぼれる雫は君の涙
間を置かずこぼれ続ける君の涙
僕は其れを止める術を持たない
はたはた 空っぽの目からこぼれる君の涙
作った滲みはいつまでも消えない
重なって重なってより濃い漆黒
はたはた こぼれおちる雫
それは大切なものばかり消していって
彼女の中にはもう何も残っていない
それでもまだこぼれ続ける
きっと世界が終わるまで
『眼下の街』
『道具に宿る命』★
それはまさに自分の半身 なくてはならないもの
世界に生れ落ちて初めて本能のまま選び取るもの
魂の奥底から求める それは 君の魂と混ざり合って
僕らは共に在ってこそ成り立つ存在

手を伸ばして、
この手に掴んで、
「行くぞ!反撃開始だ!」
「はいッ!」