――突如現れた光の扉は俺の都合などお構いなしにゆらりと開いて、俺を光の渦の中に飲み込んだ。

「いい加減にしてくれ!」
「しょうがないんじゃない」
 翌日の朝、涙ながらに訴える俺に、幼馴染はさらりと言い捨てた。
「お前ッ……他人事だと思って!」
「てゆーか僕に言われてもね」
「そりゃ――」
 確かにその通りなのだけれど。だって彼には何の責任も無いし、どちらかと言えば同じ立場で被害者だ。
「にしても、もうちょっと親身になってくれてもいいんじゃね?」
「……だってどうしようもないもの」
 こいつもそれなりに参っているのだろうか、諦めたようにため息をついた。

 こことは別の世界の生き物で"人間"という種族が、ある日、"召喚"と呼ばれる術を編み出した。異世界のものを呼び寄せ自らの力として振るう術。特殊な石で自らの魔力を増幅することによって、自分より強力な異世界の住人を強制的に誓約下に置く、極めて性質の悪い術だ。
 つまり俺やこいつ、この世界に住む者すべて、ある日突然相手の勝手な都合で呼び出される立場になってしまったのだ。
 力の強いヤツはいい。特殊能力もなくか弱いヤツもいい。――だってそうそう呼び出されることがないから。中級あたりに位置づけられる俺なんかは、ひっきりなしにお呼びがかかる。強制的に結ばれる誓約でも逆らえはしないのだ。
 時間の流れが違うらしい向こうの世界の召喚師達は、睡眠中だろうが食事中だろうがもっとイロイロヤバイ時間中だろうがお構いなしに呼び出しやがる。
「――シルファが死んだって」
「……、ああ、聞いた」
 そうして俺達を呼び出した召喚師達は、俺達を戦争の道具に使っている。酷く荒れているらしい向こうの世界で、死ぬ者が少なくない。
 憎い人間の盾となり、最後の命の灯火さえも攻撃の手に注ぎ込み、遠い異世界で力尽き還ることも出来ず――
 例え目の前に立つのが自分の愛しい者だとしても、強制的な全力を緩めることも出来ない。
「いつか、俺もそうなるかな」
「……そう……かも、ね」

 ――真っ白な光の向こう側には、地獄が待っている。

ドアの向こう側『光の扉、その向こう側』